
本土最東端、納沙布岬にそびえ立つ「オーロラタワー」は、北方領土を望む象徴的な展望塔です。
しかし、残念ながら2020年1月1日から休館しており、現在も閉鎖されたままとなっています。

望郷の念を込めた塔
オーロラタワーは、単なる観光施設ではなく、北方領土返還運動のシンボルとして重要な意味を持っています。
- 建設と名称の変遷
1987年7月に、笹川良一氏によって「笹川記念平和の塔」として建設されました。
その後、「望郷の塔」という名称を経て、現在は通称「オーロラタワー」として知られています。 - 目的
主な目的は、北方領土を間近に望むこの地から、領土返還への願いを発信し続けることです。塔は、NPO法人「千島の砦」によって運営されてきました。

オーロラタワーの施設概要
- 高さ: 地上96メートル。
- 展望: 360度のパノラマが広がる展望室からは、わずか1850m沖合にある日ロ間の中間ラインや、その先の歯舞群島(水晶島など)、国後島、さらには知床連峰まで一望できます。
肉眼でもロシア側の施設が視認できるほどの距離です。
現在の状況と休館の理由
オーロラタワーは2020年1月1日を最後に、新型コロナウイルスの影響による来場者数の減少を理由に休館に入りました。
当初は「当面の間」とされていましたが、その後も再開には至っていません。
施設の老朽化や運営上の課題も指摘されており、併設されていたレストランなどの建物も損傷がかなり進んでいます。

運営するNPO法人は営業再開を諦めていないとの意向を示しているものの、具体的な再開の目途は立っていないのが現状です。
納沙布岬を訪れる多くの観光客にとって象徴的な建物であるため、その今後の動向が注目されています。


1. 「オーロラ」という名称の由来

なぜ、オーロラが見えるわけではないこの地で「オーロラタワー」と名付けられたのでしょうか。
- 象徴としての「希望の光」
このタワーは1987年の建設当初、「笹川記念 平和の塔」と呼ばれていました。
その後「望郷の塔」を経て、1993年頃に「オーロラタワー」という愛称が付けられました。 - これは、北の空に現れるオーロラを「北方領土返還への希望の光」として象徴させた、詩的なネーミングです。
物理的にオーロラが観測できる場所という意味ではありません。
2. 運営団体「NPO法人 千島の砦」の実情

オーロラタワーの運営は、根室市の「特定非営利活動法人(NPO法人) 千島の砦(ちしまのとりで)」が行ってきました。
- 運営の目的
このNPO法人は、オーロラタワー(望郷の塔)の管理運営を通じて、北方領土返還要求運動の「砦」となることを目的に設立されました。 - 収入源の脆弱性
運営は、タワーの入場料収入(大人500円)にほぼ全面的に依存していました。
これは、天候や観光客の増減に直結する非常に不安定な収益構造であったことを意味します。
3. 休館に至った「本当の理由」:財政的困窮
2020年1月の休館理由は「新型コロナウイルスの影響」とされていますが、これは「最後の引き金」に過ぎず、それ以前から構造的な問題を抱えていました。
- コロナ以前からの来場者減少
訪日外国人の増加(インバウンド)はあったものの、国内の団体旅行の減少などにより、来場者数は長期的に減少傾向にありました。 - 老朽化による維持費の増大
建設から30年以上が経過し、建物の老朽化が深刻化していました。
特に以下の維持管理費がNPOの財政を圧迫しました。- エレベーターの維持・更新費
- 外壁の補修費(海沿いの厳しい気候による塩害など)
- 各種安全基準の維持費
- 決定打となったコロナ禍
2020年からのコロナ禍により、観光客がほぼゼロになりました。
入場料収入が完全に途絶えたことで、莫大な維持費を支払うことが不可能となり、休館(事実上の閉鎖)に追い込まれました。
4. 再開に向けた「最大の壁」
休館から時間が経過し、タワーは現在「塩害や風雪による損傷が進んでいる」と報じられています。
最大の問題は、再開に必要な費用の捻出です。
- 私有財産という壁
タワーは笹川氏(日本財団)によって寄贈され、現在はNPO法人が所有する「私有財産」です。
そのため、根室市や北海道が公金(税金)を投入して修繕することが原則として非常に困難です。 - 求められる莫大な修繕費
再開するには、老朽化したエレベーターの全面的な交換や、安全基準を満たすための大規模修繕が必要となります。
この費用は数千万円から億単位になると推定されています。 - 膠着状態
- NPO法人には、その費用を自己負担する能力はありません。
- 行政は、私有財産であるため支援ができません。
- 結果として、返還運動のシンボルでありながら、誰の手も借りられずに「塩漬け」になっているのが現状です。

オーロラタワーは、「領土返還の象徴」として大きな期待を背負って建設されましたが、その維持管理の重荷を地元の一NPOが担うという構造的な無理が、老朽化とコロナ禍によって限界に達した、という深い問題を抱えています。
このまま風化し倒壊するのを待つのでしょうか?
危険と判断され税金が投入されて解体されるのでしょうか?




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